天皇賞秋の各馬分析4頭目はミュージアムマイル。
結論に買い・消しなどの大方の見解とその根拠などを記載しているため、簡単には結論を見ていただければ十分かと思います。
天皇賞秋の過去レース分析とそれから得られた分析結論(レース傾向など)についてはこちらから。
基本情報(馬名:馬齢:血統(父×母父):前走:鞍上)
ミュージアムマイル:牡3歳:リオンディーズ×ハーツクライ:前走セントライト記念1人気1着:C.デムーロ
結論
■デビューからの2戦ではゲートが開くのに驚いたり、道中に前をカットするように交わされた時に反応するような仕草を見せて精神的に幼い部分があったが、3戦目以降はそのような素振りを見せることはなく、皐月賞では3角手前で2度も大きな接触がありながら優勝したように、今は動じずに自分の力を出せるようになっている
■これまでに複数回出遅れているようにスタートは上手ではなく、前走のセントライト記念時点でも出負けするようなスタートになっていたことから、現状は改善されていないと見る
■2歳時の4戦はいずれもスローペースから高速上がりを求められるようなレース展開の中で上がり2位以内を使って好走していたが、瞬発力を求められる展開が本質的に向くというよりは展開利や抜けた能力によって好走していた印象で、これまでに複数回コーナーで加速して進出する競馬ができていることから、本質的には直線の長いコースよりもコーナーでの加速が求められる小回り・内回りコースが向いていると考える
■天皇賞では明確に直線の長いコースへの適性が問われる面があり、ダービーの結果からもマスカレードボールに対しては少なくとも適正面で劣る印象で、スローペースでは前を飲み込むほどの高速上がりを使えず、ミドルペースではスタートが上手くないこともありポジションを取れないレースが想像できる、前が止まるようなハイペースなら前進がありそうだが、基本的には適正を鑑みて大きくは評価しない、斤量利がある3歳馬であることは警戒したい要素ではあるものの、評価しても下の方の相手で
全レース分析
2歳
【1】中京1600m新馬:3着:幸
・陣営は「自分からというタイプではないけど、動きは水準以上。気合が乗ってくれば」とコメントしていた、追い切りは併用で併せ馬も行われていた、当週は坂路で終い重点
・レースは開催5日目(Aコース5日目)の馬場の中36.4 – 60.6 – 34.5の後傾1.9で、道中をスローペースで進めると、ラストは残り3Fから0.4加速して11.7 – 11.3 – 11.5と伸びる展開で、上位の上がりを使った3頭が圏内を独占した
・最内枠からゲートが開いたのに驚いた様子で大きく出遅れると少し促されながら後方のインを追走した、向正面では徐々に外へ誘導されて3角では後方の大外の位置取りとなっていた、勝負所では残り5F付近から促されていくと、馬群の外をまわって進出して中団の大外になって直線へ、直線では2位より0.4秒速い上がり最速34.1で伸ばしたが、先に抜け出した4角1, 2番手の馬には迫れず3着まで
【2】京都1800m未勝利:1着:1ヶ月半:幸
・陣営は「ラストは鋭く伸びてくれた。距離延長はプラスなので、スタート次第では」とコメントしていた、追い切りは併用で1週前のW、当週の坂路ともに前走より速い時計が出されていた
・レースは開催1日目(Aコース1日目)の馬場の中36.2 – 60.3 – 34.6の後傾1.6で、道中をややスローペースで進めると、ラストは残り3Fから0.4加速して11.5 – 11.6 – 11.5と伸びる展開で、上位の上がりを使った馬が圏内を独占した
・8頭立ての4番枠から五分のスタートを切ると少し出して行って内へ寄せて好位の馬群を追走した、序盤には外から逃げ馬に前をカットされた所でかなり慌てて頭を上げていたが、その後は落ち着いて追走できていた、勝負所では残り4F付近から少しずつ促されていくと好位の馬群の位置取りになって直線へ、直線では先に抜け出していた2着馬を目標に追い出されると、上がり2位だったその逃げ馬よりも0.6秒速い上がり最速34.2で差し切って優勝
・前走にゲートで驚いていた様子を見ても少し怖がりな面がありそう
【3】京都2000m1勝クラス:1着:1ヶ月:C.デムーロ
・追い切りは坂路オンリーで1週前のみ併せ馬が行われ、その1週前では自己ベスト53.4 – 12.1が出されていた
・レースは開催12日目(Bコース4日目)の馬場の中36.9 – 61.7 – 34.1の後傾2.8で、道中をスローペースで進めると、ラストは残り4Fから0.8加速して11.7 – 11.2 – 11.3 – 11.6と残り3Fからの加速も大きな展開で、上位の上がりを使った馬が圏内を独占した
・8頭立ての2番枠から出負け気味のスタートを切ると1角までに外へ誘導されて中団の外を追走した、距離延長のスローペースだったが道中は折り合って追走できていた、勝負所では残り4Fから促され残り3F過ぎから外へ出されて進出すると、ポジションを押し上げて馬群の1列目に並びかけて内から3頭目から直線へ、直線では鋭くラストまで伸びるとゴール前でも2着馬を離していくような脚色で3馬身差の完勝、2位より0.9秒速い上がり最速33.7
・4角ではコーナーでも上手く加速して前に取り付けており、小回りなどのコーナーでの加速が要求されるコースでも末を伸ばせるタイプか
【4】朝日杯FS(京都1600m外回り):2着:1ヶ月:C.デムーロ
・陣営は「マイルになるからスタートが鍵だけど、ここ2走くらい出てくれれば大丈夫だし、じっくり脚をためられる外回りに変わるのはプラス。出来も前走以上に思えるので期待したい」とコメントしていた、追い切りは前走に続いて坂路オンリーで1週前には自己ベスト52.1 – 12.4が一杯で出されていた
・レースは開催22日目(Dコース2日目)の馬場の中35.4 – 60.4 – 33.7の後傾1.7で、道中をスローペースで進めると、ラストは残り3Fから0.6加速して11.8 – 10.9 – 11.0と伸びる高速上がり戦で、上位の上がりを使った3頭が圏内を独占した、1枠と2枠の4頭で4着までを占めており、内枠決着でもあった
・内枠から少しあおり気味のスタートで出遅れると促されて内へ寄せてポジションを上げて好位のインを追走した、道中は少し手綱を引かれ気味だったが折り合いの中ではあった、勝負所では前に逃げ馬を見る位置で馬群の加速に付き合うとインアウトで勝ち馬を追いかけるように外へ出されて直線へ、直線では上がり2位33.8の脚で先に抜け出した勝ち馬を追いかけたが、やや離されるような形で0.4秒差の2着まで、3着は0.4秒離していた
・レース後鞍上は「スタートは良くなかったけど、すぐにリカバリーできた。自分の中では完璧な競馬ができたんだけど、勝ち馬が強かった。マイルがどうかと思ったけど、能力を発揮してくれたし、今後が楽しみ」とコメントしていた
・ここまで4戦していずれもスローペースから速めの上がりを求められる展開で2位以内の上がりを使って好走している、このパターンしか見ていないものの、スローからの瞬発力勝負は得意な部類では
3歳
【5】弥生賞(稍重):4着:3ヶ月:幸
・陣営は「うまくリカバーできたので2着に好走してくれただけ。本質的には間違いなく中距離向き。いい結果を出して本番に向かいたい」と距離適性についてコメントしていた、追い切りは未勝利勝ち以来のW追いが取り入れられ自己ベスト79.9 – 65.6 – 11.8が出されて併せ先着していた、初の関東遠征だったが休み明けで馬体は+8kgしていた
・レースは開催4日目(Aコース4日目)で雪の影響があり稍重となった馬場の中35.9 – 60.9 – 37.2の前傾1.3で、前半をややスローペースで進めると、後半は残り5Fからまくりが入って0.7加速して11.5 – 11.7 – 12.4 – 12.1 – 12.7とラスト3Fに11秒台が入らず上がりを要する展開で、3角時点で1, 2番手の馬が1, 2着し、3-7着までを上位の上がりで差し込んだ馬が独占する決着
・外枠からスタートすると出て行って枠なりに控えて中団の外を追走した、距離延長でも道中はしっかり折り合って追走できていた、向正面では外からまくりが入ったがポジションは大きく変えず、3角では中団後方の外の位置取りになっていた、勝負所では残り4Fから促され、残り700m付近から本格的に追い出されると、馬群の外を大きくまわって進出して好位の外になって直線へ、直線では序盤は手応えがあり伸びていたが、残り200mからはまわりと同程度の脚色になり4着まで
・レース後鞍上は「直線に向いたときに手応えが良く、かわせると思いましたが、最後は同じ脚色になりました。重い馬場よりも良馬場の方がいい気はします」と馬場適性についてコメントしていた
・鞍上は馬場適性についてコメントしていたものの、3, 4角での手応えを考えると本レースでの馬場はある程度こなせた印象で、直線で伸び脚が衰えたのは勝負所で外をまわり続けた影響が大きかったと考える
【6】皐月賞:1着:1ヶ月半:モレイラ
・陣営は「外を回らされるロスがあったし馬場が悪く3角でバランスを崩してしまった。レース後すぐ息が入っていたことから力負けでないのは確か。良馬場で本来の走りを見せてほしい」とコメントしていた、追い切りは前走と同様のパターンで、1週前にはWで鞍上が騎乗し、自己ベスト並の時計が出されていた
・レースは開催16日目(Cコース2日目)の馬場の中34.5 – 59.3 – 34.8の前傾0.3で、前半を平均程度のペースで進めると、後半は残り5Fから0.9加速して11.4 – 11.5 – 11.8 – 11.4 – 11.6と11秒台半ばで伸び続けるロングスパート戦で、4着までのうち3頭が4角で10番手以下の差し有利
・中枠外目からスタートすると周囲を何度も確認しながら出して行って中団の外を追走した、序盤に促されていたが道中は後半の流れが速かったこともあり問題なく折り合っていた、向正面では内の馬が外へ張ってきた影響で、内の馬と2回大きな接触があり明確に不利を受けていた、勝負所では残り4Fから少しずつ促されると、残り400mから進路を外へ誘導されて中団の外になって直線へ、直線では溜まっていた脚を解放するような鋭い伸び脚で、先に抜け出した後のダービー馬クロワデュノールを1馬身半差し切って優勝
・レース後鞍上は「本当に良い馬ですね。素晴らしい瞬発力を最後に見せてくれました。実は道中でいろいろと課題があって、あまりスムーズな展開にならなかったのですが、最後は素晴らしい脚で勝利を獲ることができました(中略)、距離を延ばしても問題ないと思います。今日は精神的な意味でも馬は良かったですし、道中もずっと手応えが良かったです。400m延ばしても問題ないと思います」とコメントしていた
【7】日本ダービー:6着:1ヶ月半:レーン
・陣営は「今の東京コースは時計が速くなりそうだが、いい決め手を持っている馬なのでその点は歓迎。コース形態は中山よりも合っているはず。不安なところは全くないし期待は大きい」とコメントしていた、追い切りは前2走と同じパターンで、1週前のWでは鞍上騎乗で5F自己ベストの80.3 – 65.5 – 11.0が出され併せ先着していた、3戦続けての関東遠征で馬体は朝日杯時と同様で自己最軽の496kg(-4)となっていた
・レースは開催12日目(Cコース2日目)の馬場の中35.7 – 60.0 – 34.8の後傾0.9で、道中を12.1付近が続く持続的なラップで進めると、1400-1600mを12.5で緩めた後、ラスト4Fは12.2 – 11.8 – 11.3 – 11.7と残り2Fからの加速が大きな展開
・中枠内目からスタートすると無理せず控えて中団の外で前に2着馬を見る位置を追走した、道中はしっかり折り合って追走できていた、勝負所では馬群の外をまわったまま残り4F付近から少しずつエンジンをかけていくと中団の大外になって直線へ、直線では前にいた2着馬を目掛けて同じような脚色で伸びていたが、ラスト200mからは離されるような形になって6着まで
・レース後鞍上は「7番枠からいいスタートを切って、道中の反応も良かったです。前半のペースがちょっと流れたことで、後方からの競馬になりましたが、この馬としてはリズム良く走れました。直線も反応を見せて、一生懸命走ってくれました。しかし今日は、ポジション取りと展開の差が出た感じです」とコメントしていた
・4着までに4角で5番手以内の馬が3頭いたように前も止まらない展開で、その前を飲み込むほどの脚は使えなかった形
【8】セントライト記念:1着:3ヶ月半:戸崎
・陣営は「体はそれほど増えていないけど、精神面が強くなっているし成長を感じる。やるごとに動きも良化。好結果を出して次に向かいたい」とコメントしていた、追い切りはいつものパターンも1週前はジョッキー騎乗で終い重点の時計だった
・レースは開催5日目(Bコース5日目)の馬場の中35.6 – 60.3 – 34.9の後傾0.7で、道中をややスローペースで進めると、ラストは残り5Fから0.3加速して11.9 – 11.5 – 11.9 – 11.4 – 11.6と伸びる高速5F戦
・中枠少し出負け気味のスタートを切ると馬なりで中団後方を単独で追走した、道中はしっかり折り合って追走できていた、向正面では残り5Fから外から進出する馬がおり本馬も少しずつ促されていた、勝負所では馬群の外をまわりながら加速に付き合うと、残り400m手前から追い出されて中団の大外から直線へ、直線ではしっかりと自身の脚を伸ばして上がり2位34.4で差し切り優勝
・レース後鞍上は「ポジションは出てから考えようかなという感じでした。それほど出だしに気がある馬ではないので、後ろからになるかなと思いましたが、道中はいいリズムで行けたと思います。手応えもありましたし、ある程度外を回っても力で押し切れるのではと思って、思いきりギアを入れていきました。(この馬の強さは)周りに影響されずに、どっしりしているなという面もありましたし、レースは凄く乗りやすい馬で、どんな展開になっても対応できる強さがあると思います」とコメントしていた
結論(再掲)
■デビューからの2戦ではゲートが開くのに驚いたり、道中に前をカットするように交わされた時に反応するような仕草を見せて精神的に幼い部分があったが、3戦目以降はそのような素振りを見せることはなく、皐月賞では3角手前で2度も大きな接触がありながら優勝したように、今は動じずに自分の力を出せるようになっている
■これまでに複数回出遅れているようにスタートは上手ではなく、前走のセントライト記念時点でも出負けするようなスタートになっていたことから、現状は改善されていないと見る
■2歳時の4戦はいずれもスローペースから高速上がりを求められるようなレース展開の中で上がり2位以内を使って好走していたが、瞬発力を求められる展開が本質的に向くというよりは展開利や抜けた能力によって好走していた印象で、これまでに複数回コーナーで加速して進出する競馬ができていることから、本質的には直線の長いコースよりもコーナーでの加速が求められる小回り・内回りコースが向いていると考える
■天皇賞では明確に直線の長いコースへの適性が問われる面があり、ダービーの結果からもマスカレードボールに対しては少なくとも適正面で劣る印象で、スローペースでは前を飲み込むほどの高速上がりを使えず、ミドルペースではスタートが上手くないこともありポジションを取れないレースが想像できる、前が止まるようなハイペースなら前進がありそうだが、基本的には適正を鑑みて大きくは評価しない、斤量利がある3歳馬であることは警戒したい要素ではあるものの、評価しても下の方の相手で
Gregory
